一休 その破戒と風狂

一休―その破戒と風狂

一休―その破戒と風狂


禅僧の生涯を個別に詳しく書いた本を読みたいと思い購入。一休は前から好きでした。

学問的な本かと思って購入したのですが、著者もあとがきで書いているように「一休追慕の想いの結晶として生まれた」もので、エッセイに近いです。

一休を賛嘆しながらその生涯をたどり、あれこれと自分の想ったことを書いていくのですが、一休といろいろなものを関連づけていく、その関連づけの根拠が弱いように感じました。もちろん根拠らしきものは示すのですが、読んでいて「何でも関連づければいいというものじゃないぞ」と感じてしまう。あくまでも、著者の自由な随想を述べていく本なんですね。それでも、日本文化についての教養がそれなりにある人の書いたものなので、全くのデタラメではないし、いろいろ参考になる意見も多いです。

文章は、名文だとは思うのですが、かなりおおげさな表現が目立ち、抽象的な言葉ばかりで意味不明なところも多かったです。おおげさな表現については、多分正直に自分の感動を書いたのでしょうが、一般の読者からみるとちょっとオーバーすぎますね。一休を持ち上げすぎ。

第二章では、「一休皇胤説を追う」と題して、後小松天皇の第五皇子とされる一休出生の謎が検証されるのですが、結論として著者が皇胤説を支持しているのかどうかがはっきりしません。ただ、いろんな記述を紹介していくだけ。本全体を通して読むと、どうやら皇胤説を支持しているようだとおぼろげに感じられるのですが、はっきり支持しているようには書いていません。ちょっと曖昧にしている感じですね。

気になる点は多かったものの、一休の生涯を詳しく書いた本を読むのははじめてだったので、大変勉強になりました。装丁もきれいで、本としては気に入ってます。