内側から富士通。文体を変えた方が?

内側から見た富士通「成果主義」の崩壊 (ペーパーバックス)

内側から見た富士通「成果主義」の崩壊 (ペーパーバックス)


成果主義の運営についていろいろ考えさせてくれる貴重な資料ですが、本の面白さとしては個人的にいまひとつかな。こういうのは、読んでて爆笑がまきおこるほど面白おかしく書いてくれる方がいいんですが。私としては。悲惨なものを悲惨なものとして書いていく。それはそれでいいのかもしれないが、いまひとつ豊かさを感じられず。

暴露本であると同時に批判本でもあるわけですが、できるだけ客観的に冷静に書こうと努力した跡がうかがえます。成果主義が悪いわけではないという記述、年功序列に戻ればよいというわけではないという記述がちらほらとみえます。あくまでも富士通の失敗は成果主義の運用にあったと言いたいわけです。しかし本全体のトーンは「富士通は絶対におかしい」という強い批判色に満ちています。結局それじゃんという感じで奥深さを感じられず。

だって、富士通って、おかしくても何でも、いろんな人が働いて、結婚して子をつくり、生きてきた場であったんでしょ? 定年まで働いていた人もいるわけで。ただ「おかしい」というだけで終わらない側面もあったはずでは?

終わりの方にある改善策については、アマゾンのレビューにもあったとおりちょっと退屈でした。まともな意見ではあると思うのですが、成果主義についてこれまでいわれてきたこととかぶってる感じ。新鮮さ、なんてものを出す必要はないことかもしれませんが、読む方としてはもうちょっとユニークさを出して欲しいとも思う。もちろん、ただ批判するだけではなく、具体的な改善策を提案するというのはとてもいいことだし、この著者の良心を感じさせることではありますが。

で、結論としてはもっとユーモアを入れるか、文体をちょっと丁寧な感じに変えた方がよかったのではないかと。読んでるときの感じが、何だかネトネトしてますよ。悲惨なものをそのまま悲惨なものとして書くにしても、読みくちがいいような工夫が必要だと思うんです。書き方に工夫がないように思える点が、豊かさの欠如につながるのかも。って、こういう指摘はこの本の本質には全く関係のないことかもしれませんが。