クローム襲撃

クローム襲撃 (ハヤカワ文庫SF)

クローム襲撃 (ハヤカワ文庫SF)

長年SFを読んでいるにも関わらず、ウィリアム・ギブスンの作品にはまだ触れていなかった私ですが。

去年、やっと『ニューロマンサー』を読みました(^^; 本当に遅いですね。「いまごろ読んだのか」といわれそうですが。

で、『ニューロマンサー』はめちゃくちゃ面白かったです。お話自体はそんなに盛り上がらないというか、感動的なものではないのですが。「世界を描く」ということに主眼を置いた作品だと思うので、お話がそれほど盛り上がらなくても気にならないのです。

何よりも素晴らしいのが、あの文章ですよね。何だか知らないけどかっこいいし。「どうしてこういう文章で語るの?」といいたくなる、意味不明なスタイル過剰がなぜか心地いい。あの魅力、とてもここでは語り尽くせません。

世界描写や文章のほかにも、あくまでも「個人」の生き様に視点を置くところが好きなんですよね。ハイテク社会の中の孤独。その孤独を埋めようとさまよう人々の出逢い。『ニューロマンサー』に限らず、サイバーパンク全体について、「個人」志向なのが好きです。

さて、ウィリアム・ギブスンのファンとなった私が次に読んだのが『クローム襲撃』。これも何をいまさらという感じの有名な本ですが。

いやー、まさに近年読んだ短編集の中ではベストですね、『クローム襲撃』。この先ずっと、私の中で検証され続けること間違いなしです。特に面白かったのは「記憶屋ジョニイ」と「クローム襲撃」でした。どちらも『ニューロマンサー』に近い傾向の作品ですね。

ニューロマンサー』もそうだったけど、本当に面白かったので、あまり語りたくないというか、分析したくない。ただ、ひたりたいという気持ちが強いのです(^^; あと、何度も読み返すに足る深い作品ばかりなので、作品そのものについて語るのは、ずっと後のことになると思います。

ただ、この本、最初から順に作品を読んでいこうとすると、始めに収録されている「記憶屋ジョニイ」の後の作品が、「記憶屋〜」と全然違う傾向の作品ばかり続くのでかなり戸惑います(^^;

「記憶屋ジョニイ」が『ニューロマンサー』と同じ世界のお話なので、「ずっとこういうノリでいってくれるのかなーいいなー」と勝手に期待してたら、全然違う、普通の文学っぽい作品が続いていくので「あれ?」と思う。

あっギブスンってこういうのも書いているんだと勉強にはなりますが、『ニューロマンサー』と同じようなものを期待していると盛り下がってしまうんですね。作品のこの並べ方には何か意図があるのだろうか。

もっとも、後半に収録されている作品は『ニューロマンサー』に近い感じになってくるので楽しめます。

こう書いてくると、私にとってギブスンとは『ニューロマンサー』を書いた人なのであって、もう『ニューロマンサー』みたいなやつばかり読ませてくれればいいんだよ、という姿勢が露骨にみえてきますが(^^;

で、『クローム襲撃』の次は、またギブスンの長編を読んでみたいですね。『カウント・ゼロ』や『モナリザ・オーヴァドライブ』を。そして、ひたりたいですね。ただその世界の中に。至福の瞬間かもしれません。

やっぱり私、SFが好きです(^^