パーソナリティ障害 (こころの科学セレクション)(3)

パーソナリティ障害 (こころの科学セレクション)

パーソナリティ障害 (こころの科学セレクション)

  • 7 パーソナリティ障害と「男らしさ」

一部のパーソナリティ障害に「アレキシサイミア」という感情制御の障害やうつ病の併存がみられるが、そこに古くからの「男らしさ」という概念が関わっているのではないかという考察です。
「強さを追求し弱みをみせない」という「男らしさ」の概念が、「人前で感情をみせることは男らしくない」という考えを導き、「悲しみ」などの否定的感情にブレーキが働いて、自分の感情に純粋に気づけなくなっていき、一方では「怒り」などの攻撃的感情にはアクセルがきいた状態になっていく。
「男らしさ」の追求は、まさに、一種の感情制御障害を生み出しているのだとわかる内容。

  • 8 行為障害の矯正治

行為障害とは何なのか。反社会的パーソナリティ障害との関係は? そして、行為障害の矯正治療はどのように行われるのか、医療少年院等の矯正施設での治療について、詳しく語られています。
充実した内容で、濃い感じがします。ページ数も多めです。
膨大な内容を読み込む中で、「行為障害」の定義が量的な観点からなされた便宜的なもので、質的な相違にまで踏み込んだ分類の定説はない、という指摘が印象に残りました。確かに問題だと。

反社会的パーソナリティ障害=サイコパスということらしいです。
サイコパスの起こした事件として、米国と日本の有名な例が紹介されていますが、米国のヘンリー・リー・ルーカスの例はすごすぎですね。映画『羊たちの沈黙』のレクターのモデルだそうですが、ショッキングな経歴でした。
ここまで私が読んできた論考と比べて、ちょっと違った傾向の文章で、最終的に筆者が何をいいたいのかよくわからない印象を受けました。
サイコパスの特徴である「情性欠如」について本人に責任があるのかないのか。
どっちかというと、そういうパーソナリティに生まれついたことに責任を問うことはできない、といいたいようですが、はっきり断言した書き方ではなく、「それは本人の責任だろうか?」と読者に問いかけるかたちになっています。