ULTRAMAN

お気に入り度★★★☆☆

この映画、アイデアというか、設定というか、方向性というか、全体のコンセプトはかなり好きです。

ウルトラマンに変身する主人公が元自衛隊のエースパイロットで、難病を抱える幼い息子を持った父親であるという設定は、個人的にかなり燃えるものがありました。何より、主人公が息子と接する時間を多くするために自衛隊を辞める決意をした矢先に、正体不明の光り輝く存在に戦闘機ごと覆われるあの展開は、タイミングとしてなかなか素晴らしく、ゾクッとしました。本当に、最初の部分はテンポよかったんですよね。主人公については、かなり年長であるせいか、最近の「若い」ヒーローと比べて、ひとつひとつの判断・行動が「違う」という点、かなり面白いんですよね。

全体としては、「ウルトラマン」の記念すべき第1話「ウルトラ作戦第一号」のリメイクであるという点も大変いいと思います。「ウルトラマン」の第1話は、シリーズの開始を告げるものであり、構成としても「逃げ出した光を追うもう一つの光」が地球を訪れる、という点、なかなか面白いと思うのですが、なぜかこれまで注目されていなかったように思うので、この映画を機会に、あのエピソードの検証がまた深まればいいな、と感じてます。

特撮には見せ場が多く、ゾクゾクするようなシーンがいっぱい出てきます。私も、久しぶりに涙をちょっと滲ませながらスクリーンをみつめていました。ザ・ワンにとりつかれた自衛隊員が「俺を追ってもうひとつの光がくる、そいつ、邪魔……」というシーン、なぜかゾクゾクしました。まさにウルトラ作戦第一号の再来。

戦闘においては、「飛ぶ」存在としてのウルトラマンに着眼し、実に爽快感あふれる飛行シーンをみせてくれた点も、ユニークで、素晴らしい。おまけにその「飛行」ということが、主人公が戦闘機乗りであることと絡めて、実に印象深いセリフで語られます。主人公の、「最高のフライトだった」という発言、病床の息子が気がかりだったはずなのではと思いながらも、一瞬忘れてしまうほど「飛ぶ」ことが好きなんだなと納得させられるものもあり、かなり好きです。

  • 外していたシーンも多い。

テレビのウルトラマンネクサスよりも面白いといえる部分がいっぱいで、素晴らしいとは思ったのですが……評価しようとすると、完成度の点でいまいちな気もします。ネクサス同様暗い画面が多いのも気になるし、重要なシーンのセリフのいくつかが、ちょっと首をかしげてしまうというか、外している気がします。

たとえば、「貴様はもう人間じゃない。俺は貴様を許さない!」と主人公がザ・ワン人間体につかみかかるシーン。「俺は貴様を許さない!」とまでいうのがちょっと唐突な感じがするんですよね。何しろ、主人公はまだ完全にヒーローになりきってるわけではないし、ザ・ワンにとりつかれた自衛隊員を気づかうような発言も直前にしていたので……。

決戦前に主人公が奥さんと別れるシーンも、これから大変な闘いに行くとわかっているのは主人公だけで、奥さんは何が起こってるか全くわかってないはずなのに、なぜか奥さんが戦場に夫を送り出すような雰囲気で、妙に切迫した表情になっていて……。「何があったのかは知らないけど、どうか気をつけて」という感じならわかるのですが、奥さんと主人公のやりとりが突然シリアスすぎて、何だか不自然なんですよね。

また、最後の最後が、ちょっと、これでいいのかと思ってしまったんですよね。どうしてそうなったのか曖昧にされてるというか。最後のツメが甘いと感じてしまいました。ハッピーエンドにするのはいいんですが、あれでは何だかだまされてるような気がする……。要するに説得力に欠けるんです。

しかし、「子供たちは憧れをこめてあの巨人をこう呼んでいます……ウルトラマンと」とテレビのニュースで流れるシーンが最強に近い感動を私の中に呼び起こしてくれたのも事実。うーん、何だかこの映画は「惜しい」です。

  • ツメの甘さはコスモスの映画に似ている?

面白かったけど何だかツメが甘いように感じるのが、ちょうど、ウルトラマンコスモスの2番目の映画に似ているんですよね。途中まで本当に面白かったのに、最後の決戦は強力な助っ人が唐突に出現してあっさり終わるという展開で「それはないだろう」とちょっと興ざめになってしまう、あの映画に似ています……。

イデアや設定がとてもいいと感じる点、特撮が素晴らしい点、「ヒーロー」というものをしっかり描こうとする点など、まさに絶賛したくなるような要素が多いと同時に、ところどころ首をかしげるところも多く、特に最後に納得いかないという点が、私をいまいちハマらなくさせています。惜しいなあと感じる作品。

B’zの松本さんが担当した音楽については、全く素晴らしいと感じました。サントラ買ってもいいですね。CMで流れていた曲が好きです。

  • 総評

というわけで、個人的にアイデアOK、特撮もOKだったのですが、いくつかの重要なシーンに説得力に欠けるものがあり、完成度がちょっとなーと感じたために、点数は低めになってしまいました……。