奇談集(ムーブックス)

「古来、北大西洋に出没が伝えられる謎の巨怪クラーケンとは、あのような怪物が海に流れ出たものかもしれない。グリーンランドの2000メートルの氷床に、いかなる過去が封印されているのか、われわれはまったく知るよしもないのだから……」
(第4章山のミステリー「白夜の氷河に氷づけの怪物が!? 〜グリーンランド・フォレル山」より)

なぜか急に不思議なこと、神秘的なことに興味がわき、古本屋で買ってきた本。

果たして本当にあったのかどうか、というか、本当にそういう伝説や言い伝えがあるのかどうか信憑性がかなり疑わしいお話ばかりだったように思いますが、まあ、だいたいのお話は何らかの情報源があるのでしょう。その情報源がいっさい書かれていないのが、やっぱり怪しいのですが。

書き方は物語仕立てで、情景描写や会話などが小説風に書かれているので、読んでいて面白かったです。つくば・土浦地方のお話があったのは特に興味深かった。

しかし、「白夜の氷河に氷づけの怪物が!?」というお話は、読みながら思わず「クトゥルーかよ!」と叫びたくなってしまいましたね。怪物の外見とか、モロにクトゥルー系です。発見した人が精神に異常をきたし、太古の魔族に関する謎めいた一文を残して自殺したというのも、ね。クトゥルーに関するラヴクラフト等の作品をヒントに著者が創作したのでは、と思ってしまいましたよ。

いかがわしい雰囲気がたっぷりですが(話の内容とは別にね)、そのいかがわしさが魅力にも思える不思議な本。やっぱり書き方が面白いからでしょうか。文章が、なんていうか、うまいんですよね。ゴーストライターさんのおかげかもしれませんが、名文なので、読んでいい心地よい。やっぱり不思議本は学研ですよねー。